日本ボランティア学会1999年度版学会誌

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特集 市民研究―ボランティアから生まれる新しい知

(A5判150ページ)
□コラム│ぼくが考えてきたこと
──日高敏隆(滋賀県立大学)

□インタビュー│いま、なぜボランティア学なのですか?
──栗原彬(本会副代表/立教大学)×インタビュアー:中本啓子

特集 市民研究―ボランティアから生まれる新しい知1
■講演録│経験知を科学する:ボランティア学としての『公害原論』
──宇井純(沖縄大学)

■民主主義の基盤としての研究の解放
──米本昌平(三菱化学生命科学研究所)

□座談会│市民にとって専門性とは何か
──中村陽一(本誌編集長/都留文科大学)×谷口奈保子(ぱれっと)×萩原なつ子(東横学園女子短大)×藤井敦史(東北大学)×播磨靖夫(本会副代表/たんぽぽの家)

□インタビュー│ボランティアをどんなふうに考える?
──最首悟(恵泉女子大学)×インタビュアー:杉浦光子(わらべの家)

特集 市民研究―ボランティアから生まれる新しい知2
■誤解を恐れず誤解を楽しむ
 UFO神話のまち羽咋──高野誠鮮(コスモアイル羽咋)
 妖怪と共生するまち──斉藤行雄(臼杵ミワリークラブ)
 物語を紡ぐ楽しみ──播磨靖夫(学会副代表/たんぽぽの家)

■アメリカ管見:NPOのある社会
──須田木綿子(フリーデンスハウスシニアサービス)

■アクセシブル・ミュージアム:文化施設のバリアフリー化に関する調査研究
──太田好泰(日本障害者芸術文化協会)

■芸術とヘルスケアに関する調査研究
──森下静香(財団法人たんぽぽの家)

■ボランティアと市民活動:市民の共同体をめざして
──楠原彰(国学院大学)

□特別寄稿│都市での老いとムラでの老い:その人がその人であり続けるために
──色平哲(南相木村診療所)

研究スクランブル
□ボランティアと市民権:オーストラリアでの在宅福祉ボランティア活動を通して
──舟木紳介
□ボランティア・アシスタントの海外大学日本語コース参加
──コーリヤ佐貫葉子
□行政によるボランティア活動推進を考える:板橋区ボランティア活動推進条例をもとに
──丸山晃
□スポーツ・ボランティアの知性:長野冬季五輪ボランティアの活動から
──新田和宏


編集後記
 日本ボランティア学会最初の学会誌をお届けします。既成の「学会誌」という枠組みをどこかで打ち破るものにしよう、特にこの学会が掲げてきた「経験知の科学」「市民(の/による/のための)研究」といったことがらにさまざまな人が多様な立場・視点から切り込むことによって、自ずからその相が浮かび上がるようなものにしよう、と編集委員会、運営委員会で議論を尽くしてきた、とにもかくにもこれはその結果まとまったものです。
 とはいえ、決してゴールが見えての編集ではありません。むしろその逆で、「ボランティア学」(というものが成り立つとして、それ)は始まったばかり。おそらく百人いれば百通り、千人いれば千通りの「ボランティア学」があるに違いありません。それほど、豊かさの多様性を(重すぎるくらい重い現実に向き合うことも含めて)生きる存在に満ち溢れているのがこの世界なのだと、このところますます思います。そこには、既存の「学問」が失ってしまったのかもしれない「野生の学」が胚胎している、と私は思っています。
 しかし、いろいろあるから、それでめでたしめでたしというわけにはいきません。そのいろいろ(=多様性)の間の関係性はどうなっているのか、なぜそのようないろいろなるものが生まれてきたのか、等々。学問だから、ではなく、我と我がどのような関係性のもとに、どう生きていくのか、を追究するために、「ボランティア学」は必要とされているし、それでこそ、「野生の学」も「経験知の科学」も「市民研究」も立ち上がって来るはずだからです。そもそも学問自体、元々そういうものを孕んでいたのではないか、とも思います(吉野源三郎『君たちはどう生きるか』の感銘を私的に思い起こしています)。
 だからこそ「ボランティア学」は、既存の学問の壁、実践と学問の壁をこえ、真剣に、しかし面白く学び合うものでありたいと思います。まだ生まれたての本誌への忌憚のないご意見お待ちしております。

(日本ボランティア学会運営委員・編集委員長 中村陽一)