日本ボランティア学会2006年度版学会誌

¥1,714
 +消費税
SKU: 2300000024982
※こちらの商品はご注文から発送までに約一週間ほどお時間を頂戴いたします。
あらかじめご了承ください。
特集1 共創の文化、共生の地域
特集2 ボランティアとして生きる:宇井純さんを偲んで

(A5判204ページ)
□巻頭インタビュー│社会的排除の視点から共生原理を見なおしボランティア/市民活動を捉えなおす
──栗原彬(政治社会学者)×猪瀬浩平(見沼・風の学校)

特集1 共創の文化、共生の地域
■講演録│つながりあういのち
──星寛治(農民詩人)
■現代社会における“共生”へのまなざし:「野生知」と「親密さのネットワーク」から
──呉尚浩(東北公益文科大学)
■総合学習の中で地域を学ぶ子ども達
──大井康嗣(酒田市立松原小学校)
■多様な主体の協働による庄内砂丘の海岸林保全活動の仕組みづくり
──梅津勘一(山形県公益の森専門員)
■いのちをつたえるアート
──半田結(東北公益文科大学)

特集2 ボランティアとして生きる:宇井純さんを偲んで
■いま社会が求める「市民科学者」とは
──上田昌文(市民科学研究室)
■専門家はいかにして社会的責任を取ることができるのか
──鬼頭秀一(東京大学大学院)
■それが始まりだった:自主講座「公害原論」との出会い
──家中茂(鳥取大学)
■インタビュー│足尾、水俣から:共に歩いて考えたこと
──菅井益郎(国学院大学)×楠原彰(国学院大学)
■対談│文明を超えて:共同体への道
──A.T.アリアラトネ×宇井純

投稿
□論文│被災地をめぐる自立および共生概念の考察:災害ボランティアの事例を中心に
──澤佳成
□論文│地域社会におけるNPOの役割と政策提言:阪神・淡路大震災の事例研究を通して
──大原ゆい
□研究ノート│長野県上田市における家庭養護婦派遣事業(1956年)の歴史的意義
──中嶌洋
□報告│児童村訪問記:中国の児童ケアNPOの実際
──釜賀雅史・釜賀明子



▼昨今、市民社会のなかに新しい排除が生まれています。逆にいえば、市民社会はマジョリティで塗り固められているのではなくて、いくつもの亀裂があるということですね。ですから、ひょっとしたら、亀裂があるところで新しい「信」が生まれるかもしれない。ニートとかワーキングプアとかいっているけれど、明日になれば私たちがそうなる可能性もある。そういうところと、今までの水俣病とかハンセン病の人たちなどとに接点があるし、響きあっている。共通に個人が担う「人間の政治」がある。それがすごく重要だと思いますね。そういう視野のなかに、僕らがやってきたようなボランティア活動が位置づけられるのです。(栗原彬)

▼子ども達の中に疑問が自発的にわき上がってくる瞬間、それをひたすら待っている。西遊佐小学校では、この段階を「自発的はてな?」と呼んでいる。総合学習の中で最も大事にしている場面である。10年間続いてきた活動でありながら、毎年違ったテーマで子ども達が取り組んでいるのは、そのためである。
日本の学校教育で行われてきた授業の特徴を一言で言えば、問題解決学習である。与えられた問題に対してその解決方法を子どもが考えるのである。しかし、ここで大切にしているのは問題解決能力ではない。問題発見能力である。(大井康嗣)

▼衛生工学という狭い意味での専門性を超え、水俣病の現場で、被害者の患者さんたちとかかわり、その現場から、公害という問題を総体として捉える視点は、専門家のようにある特定の専門領域から部分的に捉えるのではなく、一市民として、総体として捉えることであり、さらに、被害者の生の個別性に対して総体としてかかわろうとすることでもある。そのことによって、初めて社会的責任ということが意味を持ってくるし、「ボランティア」であるということの内実もそれによって埋められるのだと思う。(鬼頭秀一)